宙組『リッツ・ホテルくらいに大きなダイヤモンド』宝塚バウホール

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98期二人目のバウ主演,もえここと瑠風輝の初主演を見てきたので備忘録がてらのメモです。
もえこはすでに卒業した新公で主演4回(Shakespeare,エリザベート,神々の土地,偉人たちのルネサンス),バウも二番手として3回(PTT,ハッスル メイツ!,群盗)経験しているのである意味満を持してという感じはあるのですが,それにしても思ったより早かったな,という印象でした。98期は月組のありちゃんが先にArcadiaで主演しているとはいえ,月組の育成スタイルからすれば順当なので,次はもえこかなー…とぼんやり思ってはいたものの,正直来年くらいだと思ってました。
とはいえ,歌唱力にはもはや何の心配もしていないので,初演のドキドキはむしろ「ストーリーどうなんのやろ」のほうが大きかったです。だってほら,原作が相当ぶっ飛んでるから。

原作は若かりしフィッツジェラルドの作品

正直原作読まんでもええかな,と思ったんですけど。まぁ短編やしな,と思って読んでおきました。


資本主義への批判精神かな。
徹頭徹尾資本主義への皮肉が聞いてるあたり,さすがのフィッツジェラルド,若くてもフィッツジェラルドって感じなんでしょうけれど,なかなか毒が強いな,という印象でした。
あと,翻訳が村上春樹だから余計にそう感じたのかもしれないのだけれど(村上春樹への偏見),絢爛豪華なお屋敷の描写を読んでいると仏説阿弥陀経かなって錯覚しました。いや,ほら,浄土の美しさを称える部分でほんとあんな感じできらきらしい感じが描写されてるのよ。

極樂國土 有七寶池 八功德水 充滿其中 池底純以 金沙布地 四邊階道 金銀瑠璃 玻瓈合成 上有樓閣 亦以金銀瑠璃 玻瓈硨磲 赤珠碼碯 而嚴飾之
訳:極楽国土には、七宝(金・銀・青玉=瑠璃・水晶・赤真珠・碼碯・琥珀)の池がある。八功徳(澄浄・清冷・甘美・軽軟・潤沢・安和・飢渇を除く・健康増進)の水が、その中に充満している。池の底には純ら黄金の砂が布かれている。池の四辺の階段は、金・銀・瑠璃・玻瓈(水晶)からできている。階段の上には楼閣がある。また、金・銀・瑠璃(青玉)・玻瓈(水晶)・硨磲(琥珀)・赤珠(赤真珠)・碼碯で、これは厳飾している。
Wikisauce:仏説阿弥陀経

これをタカラヅカナイズした木村先生さすがの手腕

そんな批判と皮肉とブラックユーモアで形成された原作をよくあのきれいな(というか未来への希望が見える)ラストシーンに持って行ったよね,というのが初日の感想でした。原作だとジョンとキスミンはとりあえず二人で(ジョンの故郷にも顔向けできないから戻れず),デキ婚のように同棲するけどたちまち破綻するか,二人してマリファナに手を出す未来しか見えないんですよね。
少なくともタカラヅカナイズされたことで,ジョンは(忘れられない夏を過ごしたとはいえ)市民生活には戻れるし,キスミンも…まぁ世間知らずなりに世間に溶け込もうという努力はしそうだし(そして17キロの滑り台を遡行できるだけの体力と腕力と根性がある)。
そして何より,原作のキスミンは金目の物を一切持ち出さなかったけれど,あやちゃんのドレスについてるダイヤを売ればぶっちゃけ当分(あるいは相当年月)働かなくていいしね!(身もふたもない)
あと,ダンスがうまい設定は原作通りというあたりが混乱するよね…これ,タカラヅカナイズするために付け足した設定やないんやで…

若い力があふれるバウメンバー

冒頭の学祭? で歌われてるナンバーにも繰り返し出てくる若い力とか変える力とかが結局このバウの(宝塚歌劇としての)立ち位置だよなぁ…って。

ジョン・T・アンガー|瑠風 輝

初日から何の問題にも感じていない歌と芝居とダンスでした。バウ初主演にしてはすごく…安定していたように思います。…まぁ下級生多いしね。
それにしたっていわゆる ヽ(・ω・)/ズコー ってのはなかったんですよね。まったく。力押ししてる部分もないし(逆にまだ力押しできるほどのインパクトがないというか)。ソロ曲もすごく,すごくいいんだけど! 歌いだしのタイミングがですね! あまりにも説明的というか!! なんやねんその「歌ったら答えてくれるかな」って! その唐突さ一体なんやねんな…
ほぼほぼ出ずっぱりで踊りまくっているので大体いつも汗だくなので見ていて心配ではありました…脱水とかな…
それにしてもフィナーレ,もえこがたった一人シルエットで舞台に立つところからで…うわなにこれめっちゃかっこいい。手足長いしめっちゃかっこいい。

キスミン|夢白 あや

めっちゃヒロイン顔で出てきた瞬間から可愛くて,ああこのヒロインに愛されるのが主役やんな…っていう予定調和を感じさせる説得力あるヒロイン。これがヒロイン力…!
ってのはさておき,あやちゃんも新公ヒロインを複数回経験し(そのうち2回は相手がもえこ)ているのでこの二人は呼吸もあいやすいのでしょうか。
でもって身長差もちょうどいい!
デュエダンはリフトも2回あって,なかなか見ごたえのあるデュエダンでした。あやちゃんはルネサンスの本公演でも代役でデュエダンやってるので(あの頃はだいぶ硬かったけど)自分の本役としてデュエダン経験(しかもリフトあり)したのは経験値UPになったんじゃないかなぁ…

パーシー・グレイブス|鷹翔 千空

今作で一番難しい役柄。こってぃはなんていうかすんごい真面目さがにじみ出ているので,真面目に真面目に真面目に悩みぬいた末に作りだしたパーシーというキャラクターなのかな,という印象でした。
とはいえ,原作のようなちょっとジョンに対して斜に構えたパーシーではなく,ジョンに憧れて憧れて憧憬が過ぎてひと夏だけでも自分が一人占めしたいと思うとかなかなかやばいキャラでした。愛が重い。愛が重いといえばVictorianJazzの時のまよちゃんがだいもんに向ける愛も相当重かったですが(うっかり挨拶でだいもんが「愛が重い」と言ってしまうレベルで),明らかにパーシーのほうが愛が重い。自分の手で殺そうとするけどやっぱり殺せなくて自殺しようとする下りまであまりにもわかりやすい憧憬っぷり。思えば,あのシーンで初めてパーシーは自分の意思でジョン(の足)にしがみついてる? そのほかの場面で倒れるジョンを支えたりはしてるけど,意識のあるジョンに自分から触れてるのはあそこだけじゃないかな…
いやほんとパーシーについてだけでものすごく深掘りできる,こんな役を成し遂げてるこってぃすごい。すごくよかった。
それにしてももえこが汗だくになってる横でいつも涼しそうな顔してるのがちょっと面白かったです(面白がるところでは)

怪しい召使たち

初日に何げなく見て,ジムとサムのいちゃつきぐらいしかあまり気にしていなかったのですが,二回目に見ると,まっぷーの顔芸がすごく伏線で,見れば見るほど不気味さが増す3人組でした。いや,ほんとに見れば見るほど一番やばいのがこの3人ではないかな…

ジム|実羚 淳,サム|水香 依千

ジムとサムのいちゃつきはいつもジムが気だるげに座って誘ってるんですけど,ほっぺたツンツンやりだした時は「お,ここから次は肩パンでどつきあいに発展やな」と思った吉本ノリ…そんなはずなかった。でもなんだろう…いやらしさが…足りない…あれだ,ビジネスBLな香りしかしない。
でもってゆいちぃ! フィナーレになると三番手で踊ってるのがゆいちぃなんですけどあしなっが! かおちっちゃ! めっちゃ足上がってるー! 真ん中3人が背が高くて足が長いもんだから…すごく…宙組です…いやほんとあしなっが!!! って思ってたらフィナーレ終わってるんですよびっくりだ。

もうちょっとこうなんとかならんかったんかな下級生

バイトがすごく多くて…楽園の人々だったり飛行士だったりご先祖だったり学生だったり…いや,わかるよ,わかるんだけど! 役名まで与えられているならもうちょっとこう…あってもよかったんちゃうかな…っていう高望み。

リチャード/ニール|若翔 りつ

隊長かっこよかった! まだ新公学年とは思えないくらい,立派な隊長でした! 立ち居振る舞いにも重さがあって,これはいい司令官…

エドウィン|希峰 かなた

なかなか狂人っぷりがすごかったわんた。最初から最後まで(飛行士として)恨みつらみを全面に出していて,闇落ち感あふれてたのですが,最後にはアラレちゃんとどてぃとで完全にやばい3人組でしたね。

ジョージ|なつ 颯都

相変わらず頭身おかしいなつくん。一人だけ(宙組にあってなお)でかい。貴族スタイルになった時のカラータイツのひざ下がほっそ!!! って足にまず目が行くんだけどそれ以上にチャラい感じで女の子誘ってるし,芝居のラストシーンでは狂信者の表情うますぎるし(どっかでサイコパス役やってほしい)パレードではウインク決めてくるし,なんていうか成長が怖い。

ユージン|亜音 有星

ユージンとしての出番が1幕ラストだけなんですけど…そしてなんか伏線あるのかなって思ったけど脱出したら以後出番なかったユージン…好青年なんだけどね…

アラン|愛海 ひかる

アラレちゃんは何をおいてもフィナーレのやる気が人一倍…三倍くらい。下手端なのをいいことにアピールというか動きがでかい! これは見てしまうわ…。

楽園の女たち

せとぅーとりずちゃんとおさよちゃんは歌があったりで少し見せ場もあるとはいえ,なんかこう…十把一絡げに見えてしまうんだよね…飛行士たちより服装に個体差がないからかしら。
ジョンがキスミン(と楽園の女たち)にダンスを教えているところへパーシーが来たとき,キスミンも女たちもパーシーをめっちゃ怖がってうつむいてるけど,あれ多分パーシーが怒ってる方向性はあなた方の思っている「箱入りの妹に他所の男を近づけた」からではなく「せっかく一人占めするために連れてきたジョンと何を勝手に楽しんでんだ」だと思う。間違いなく。

脇を固めるベテラン上級生

アレキサンドル|悠真 倫

まりんさんは偉大だった! 特にラストの神に交渉を持ちかける場面の鬼気迫る狂人っぷりが! 16世紀みたいなかつらを取り去って,あの,カードゲームの名前みたいな人(微妙な伏せ方)に似た風貌になるのが…ここでも木村先生の教訓というか説法染みたこだわりなのかしら,と思ってみたり。
原作でも楽園の住民たちが神に賄賂を贈ろうとしているのは同じなんだけど,原作のほうがより高圧的な印象だったんですよね。神は賄賂に屈すると思い込んでいる(傲慢さ)のだけれど,舞台になると,取引に応じると本気で思っているのかは疑わしいというか。
Twitterでどなたかが考察されていたのだけれど,楽園の主はすでにパーシーに移っているので,あの場面で最優先されるのはパーシーの願いであるはずで,パーシーは楽園の存続ではなく,ジョン(とキスミン)の生存を願ったんじゃないか,っていう。確かに言われてみればすでに隠居したアレキサンドルには何の権限もないはずだわ,とすごく納得しました。

クレメンタイン|美風 舞良

得体の知れなさという意味では…まぁ確かに得体が知れないんだけど,まりんさんの横にいるからニコイチな感じでおひとりでのインパクトは…いや,決して小さくはなかったわ。でもキャラクターとしてこれぞ! っていうのではなくて,舞台をぴしっと締めてくださる役割でした。

トム|松風 輝

まっぷーを若いバウメンバーのくくりに入れるのはなんかあれなんで外してみたんですけど,まっぷーは何て言うか黒塗り職人な感じがするというか,よく黒塗りしている気がするのは気のせいかな。
顔芸がほんとにすごく良くて,ジョンに対してイラついてるのがすごく良くわかる。最初はただの召使で,黒人奴隷が解放されたことは知っているけれど代々仕えているからそれに何の不満もない,世間から隔絶された3人なのかとも思ったけど,そんな純粋なもんじゃなかった。あのお屋敷の中の人々はみんな狂ってるけど,一番やばいのがこの実行犯の3人で,リーダー格のトムだった。
一応楽園の王(というより管理者?)はパーシーと認めているけれど,パーシーにジョンを殺せるわけがないと思っている(若干さげすんでる?)みたいなのもよかった。でも裏話聞くと そらパーシー(殺害に関して)信頼度ゼロやな としか思えなかったのでトムが正しい。

ポピー|瀬戸花 まり

せとぅーは今回,娘役の中ではかなり出番が多かった(とはいえ,一番出番の多いキスミンの侍女としては…)ただ,冒頭の農民女はちょっと唐突で,あそこが荒れ地であることを知らしめる役柄というには弱かったし,原作読んでたら「汽車が止まると云々」の村人なのかと思うけれど…せっかく歌い上げるのに意味合いが読み取りづらいんだよね…

まとめ

あの原作の,憂鬱しかない後日をよく(ジョンとキスミンだけとはいえ)前向きな明日を思わせるラストに持って行ったな,というのが正直なところです。
アドリブを入れるような場面がほとんどなかったのですが,もともと宙組ってそんなアドリブに積極的な組でもないと思うので,千秋楽にちょいちょい入れてきたくらいが(下級生バウだし)ちょうどいいのかな…。
それにしても最後,デュエダンまでしっかりあって,ほんっとに経験値をたくさんもらえるバウだったと思います。

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1件のコメント

  1. なつ颯都くんって、Ⅰ幕最初のアメリカ万歳の歌のとき、どんな格好でしたか……??
    わからなくて……
    瑠風輝くんと話したりしてましたか??
    教えていただけると助かります

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