月組『I AM FROM AUSTRIA-故郷は甘き調べ-』

この記事はだいたい 825 で読めます

当地で大好評ロングランだったという作品の日本初演,初日に見てきました。
UCCミュージカルというとミーマイが真っ先に思い浮かびますが,今作もハッピーエンドなコメディ作品です。ミーマイよりもずっと現代劇なので,雰囲気としてはそれこそ雪組でやった『Shall We Dance?』くらいリアルタイムな現代劇。何があっても最後はハッピーエンドなので,水戸黄門のような安心感で見ていられる作品でした。
1幕は正直,ちょっと雰囲気がつかみづらくて(これまでの宝塚作品とはやっぱり毛色も違うし…)リピート不安だったのですが,2幕はこちらも馴染んできたのかすごく自然に見てられました。何より,面白かった(それが一番大事)。

オーストリアのことはよくわからないけれど…

エリザはみんな履修したよね?

作中で,オーストリア出身の(またはオーストリアで活躍した)歴史上の有名人がたくさん比喩として出てくるのですが,一番多いのがエリザ関連。
伝統あるホテルをハプスブルクに例え,敏腕女社長(ロミー・エードラー|海乃美月)がゾフィー(「このホテルのゾフィーには誰も逆らえないさ」とかいうセリフ),その息子(ジョージ・エードラー|珠城りょう)はフランツ・ヨーゼフ。父親(ヴォルフガング・エードラー|鳳月杏)からも母親からも「私たちのフランツ・ヨーゼフ」というセリフが何度かあり,ほかにも「この国ではシシィのころから女が強い」と言わしめたり。
ジョージがエマに対して「人は僕をフランツ・ヨーゼフと呼ぶ」みたいなことを名乗った後で,エマがそれに対して「エリーザベト・アマーリエ・オイゲーニエ・フォン・ヴィッテルスバッハ」と名乗る流れがあったり…とりあえず客席はこの辺の名前と関係は全部わかってるよね! っていう全幅の信頼というか念押し感半端ない。

楽曲が多い

とにかくナンバーが多い! という印象です。歌っている人が多いからそう思うのかもしれないのですが…普段はどうしてもトップスター,トップコンビから2~3番手にかかるナンバーが多いかと思うのですが,今作はほんっとうにいろんな人が歌って踊るんですよ。役としては確かに少ない一本物だけれど,かなりナンバーが多い(そして衣装も結構幅広い)ので,かなり見ごたえがあります。
海ちゃんがいきなりコンサバ風味なワンピースを脱ぎ捨てて金色ダルマで飛び跳ねて踊りまくって銀橋センターに出るんですよ。…あれ? ママいくつだっけ?(二幕で「私たちも年を取ったわ」とか言うんだけど違和感しかない。若すぎるよママ…)
るうくんがセンターで歌いまくるんですよ! 今作のるうくんマジで無双。

月組ってバランスいいよね

若い若いって言われてるけどなんだかんだでバランスいいよね月組。

幕が上がる前から斎藤先生らしさ

そして,齋藤先生といえばオープニングムービー。いやもうほんと齋藤先生といえば! オープニングムービーですよね!! って私が勝手に思ってるだけかもしれんけど。
さすがに原作というか元があるものなので,そこまで「ざ・サイトー」ってところまで振り切ってはなかったですけど,Overtureに映像のせてくるあたり,さすがです齋藤先生。

今作のほうがお披露目っぽくない?

正直ね,前作は前作でもちろんよかったとは思うんですよ。でもね! お芝居としては前作はとてもお披露目の演目ではなかったと思うんですよ。あまりにもさくらちゃん(の役)がかわいそうすぎる。武蔵は「これだから男ってやつは!!!」っていう役柄だったのでね…なので今作,お芝居でしっかりハッピーエンドになったのを見られてよかったです。
さくらちゃんは1幕はかなり力が入りすぎているようにも見受けられたので,そこがちょっと不安というか…うーん…って思ったんですけど。でも2幕はそんなことなかったので単に気負いであったのだと思います。歌唱力はほんっと素晴らしかったので,後は芝居でいい感じに力が抜けていくともっといいんじゃないかなー…と思いました。
ジョージについて,公演プログラムではたまきち本来の気性よりもかなり楽観的というか破天荒というか,すごくやんちゃな人かと思ったんですが,たまきちの誠実ポイントがその上をいってましたね。フランツ・ヨーゼフというより(旧態依然としたホテルを改革しようとする)ルドルフみたい(ただし革命は成功する)。

光月無双

前知識ゼロだったので,公演プログラム見るまでるうくん女役だって知らなかったんですよね。でもよくよく考えるとるうくん,組長になって大劇場公演初めてじゃないですか。当たり前だけど大劇場初日のお仕事も初めてじゃないですか。まさかの,初めが,イレギュラー(女役)。ご挨拶のために前に出た時,客席からは隠し切れないざわめきが起こってですね…るうくんも「何やら笑い声がしておりますが」と前置きしてのご挨拶でした。…だって群舞は男役で出てたのにパレードはまた女に戻ってるんだよるうくん。そして腕を出して他の娘役と同じ格好をするとしぐさが…しぐさがどうしたって他と違うのが丸わかりなんですもの…!
それはさておき,お芝居でのるうくんは狂言回しというか,ほんっとに大きな役でした。まさか大劇場本公演でど真ん中で歌うるうくんが見られる日が来るとは。
…あと,フィットネスジムのシーン,それまでおばあちゃんだったのにエクササイズするるうくんの動きが機敏すぎるww

5年ぶりの月組復帰,鳳月杏の重厚感

まさにものすごーーーーーーく大きくなって帰ってきたちなつって感じ。るうくんが狂言回しなら,一番場面の空気を変える仕事をしてたのがちなつ。海ちゃんとたまきちの間で,常に両方の味方をする…見ようによっては優柔不断なんだけど,でも根無し草じゃないんだよなぁ…すごくいいパパさん。ちゃんと海ちゃんがいなくなってからたまきちを全面的に褒めたりして,夫婦間の飴と鞭の役割分担が10:0ではっきりしてる夫婦。ちょっと高田純次っぽい(いい意味ですごくいい加減)。
そしてここに絡んできてたのがさちか。さちかくらいのキャリアであのキャピキャピはどうなん? ってちょっと思ったりもしたんだけど(かつみさゆりのさゆりみたいなテンション),逆にあれはさちかくらいのキャリアでないと無理やわ。難しい。

晴れて二番手,月城かなと

こちらもおかえりなさい,なれいこ。…Twitterで見かけたんですけど,雪組時代のれいこはいわゆる正統派な美男子が多かったようにも思うのですが(特に雪組後半部分),月組に来てからどうしたことかこういう…ビジュアル二枚目中身三枚目な役が多いような。いやでも雪組の時も白菜王子だったし今がそういうターンなのでしょう。きっと。
とはいえ,三枚目な役をきっちりできるのも大事なことだと思うので,今作でも思う存分「ウィンナー野郎」と連呼していただきたいところです。
…それにしても札束ソングで大画面にドアップにされて揺るがない美貌はさすがですね。

アルゼンチン代表,パヴロ・ガルシア

これね,ややこしいことにパヴロ・ガルシアていうサッカー選手が実際にいるのよね。ウクライナ代表で(ユニの色まで似ている)。
てのはさておき。
ありちゃんがマッチョ。マッチョ……#とは
ってのもおいといて。
このマッチョのナンバーはすごくノリがよかったので明日から手拍子ガンガン入って大盛り上がりだと思います。
もっとチャラくて嫌な奴なのかと思ったけど,すごくいいやつでした。何やら元の作品ではゲイセクシャルであることがもっとオープンに描かれているようですが,宝塚版はそのへんめっちゃ薄味でした。はっきり描いたのはラストシーンくらいかな?
…2回目に見たら,落ち込んでるフェリックスを励ましたり,握手したりした時に気があるアピールを露骨に(あくまで人間関係として露骨なだけで舞台表現としては意識してみてないとわからないレベル)アピールはしてました。

私はこれが見たかった,英かおとの髭

今回新人公演初主演となる英かおとくん。この子は以前,A-ANに出ていたころから学年詐欺って思ってて(あれもう4年前),アーサー王で髭が似合うって太鼓判を押した(3年前)アジアン少年もできるし女役ダルマもできる彼が今回,バーテンで髭をつけているのです!! いやもうマジで学年詐欺半端ない髭だからマジでよくよく見ておいてほしい。

さいごに

今回の客席は時節柄かとても外国人観光客が多い印象でした(幕間にマッチョマッチョで爆笑している姿を見かけました)。オーストリアとの150周年だから,というよりは(初日はそのようなテレビクルーも見かけましたが)ラグビーワールドカップ期間だからかな,という印象。そういう意味では比較的チケットが取りやすい演目でよかったのかな…と悪気なく思います。
…ていうかね! 他の公演のチケット! とれなさすぎなんですよ!!! (東宝はもともととはいえムラでも)
はっきり言って新規顧客を取り込める状態じゃない。10年ちょっと前くらいの当日券余裕で買えてガラガラ…ってのよりは今のほうがいいっていうことはもちろんわかってはいるのですが,あまりにもプラチナチケットすぎる。安定興行には一定の新規顧客の獲得が必要なはずなのに,新規顧客の参入ハードルが高すぎる。リセールとかも始まってはいるけれど,引き続き劇場に足を運ぶ新規顧客を獲得する方法は考えていってほしいなぁ,と思いました。

この公演見るの悩んでる人がいたら,悩むくらいなら見ろ! って言うわ。きっと(権利買うために使ったお金を回収するために)再演もするだろうけれど,初演ってやっぱり特別なものだし,まだ新しいミュージカルだから日本でも大ヒットするかといえばまだ未知数だけど,ハッピーコメディの1本物という意味では正直私はミーマイよりこっちのほうが好きかな…いろんな人に見せ場あるし。

にほんブログ村 演劇ブログ 宝塚歌劇団へ

Pocket

返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA