花組『蘭陵王—美しすぎる武将—』シアタードラマシティ

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どうも,お久しぶりです。
生きてます。
私生活でいろいろあって,中1年未満で再度転職活動したり,転職決めたり,実家から出たりしてたのですが相変わらず宝塚は見ています。

で。

かちゃで蘭陵王,と聞いたときから楽しみしかなかった。
かちゃの蘭陵王とか美貌に非の打ち所もないやん。
ポスターの「美しかったが悪いか」の台詞に何の嫌味も無いというか,「美しい事は正義ですよね」としか思えないかちゃのビジュアルの説得力よ…

…って期待値上がった上で見た後

正直,なんか私の思っていた蘭陵王とは違う…と思ってしまったのですが,あれこれ思うところもあったので備忘がてらに書いておきます。

蘭陵王とは

説明不要なくらいメジャーな素材だと思いました。詳しいところまでは知らなくても,蘭陵王という名前は(最近ゲームにも出てくるし,私はやってないので詳細存じ上げないけれど)知られているのでは,と思います。
日本人的にはこの「身内から疎まれて殺される」という流れに義経を連想するのですが,中国では曹植を連想するようで,ということは義経と曹植は同一属性なのでは,と思ったものの,曹植は武人というよりは詩歌に秀でた人という印象が強すぎて,私の中ではいまいちつながりませんでした。

素材は一級,調理方法はオリジナル

なんかね,創作料理って感じでした。確かに素材は見えているんだけど,味付けがなんか…すんごい独創的だった。そういう意味ではさすが木村先生とも思うけれど,私の口には合わない料理だったかなぁ…って。多分生田先生とか大野先生がやったらまず公演プログラムが文字で埋まるだろうな,という印象です。

のっけから説明が頭に入ってこない舞月なぎさオンステージ

いや,誰が悪いって,木村先生が悪いんですけど(言い切った)。
なぜ,生い立ちを説明するのに,あんなけ動きの多いアップテンポな曲にしたのか…!
お,おう…? みたいな反応してる間に母親が卑しい生まれだったから皇子だけど捨てられて,皇帝が後から心変わりして(この時点で皇帝もどうかと思う)探したけど見つからなくて…みたいな説明がだーーーーっと流れていきます。お,おう。

しかし背中の入れ墨(しかも漢字)っていうのは…如何様にも偽造できそうな…識字率低い世界でしか使えないけど実際に識字率低いのか,もしくは高貴な人しか読めない字体で彫られているのか。ていうか幼児の段階で入れ墨か…

美しかったが悪いか

この台詞は二幕に実際に出てくるんですが,蘭陵王は美しかったがために生き延びることも出来たが,その度にその美しさで(本人にそんなつもりはなかったけど)男を狂わせてきたんだよね。

ただ,その生い立ちが広く知られているにしても,いったいどの程度の内容で巷に知られているというのか…お断りされた女たちが「男しか愛せない」「いっそ可哀想」と囃し立てているのは,つまるところ男の慰み者として生きてきたということを知られている(貧しい村や盗賊の元で育った,という内容ではなく)ということなのか。であれば蘭陵王に向けられる視線はそれなりに好奇なものであったろうし,蘭陵王が武に打ち込んで「生きるために強くなる」ことに拘泥したのもまぁわかる。

ただ,美しすぎて男を引きつけるのはなんか…なんか違うと思うんだ…

そしてこの台詞をほんとに捨て台詞のように言うから…なんだろう,せっかく説得力があるのに。

年齢設定が迷子

生まれが不詳であることを棄て子設定にするのはまぁ解るとして,家を飛び出してからがまるで御稚児さん…年齢設定どうなってるんだろうかと時々頭が迷子になる…

自分が拾われた子だとわかって家を飛び出すだけの理解力のある年頃から,村長そして盗賊に囲われて,皇子であることが発覚するまでいったいどれくらいの年月を想定しているんだろう…皇子になってから,武芸作法の修行をして,初陣は遅くとも10代半ばだろうし,褒美に女を使わされるのなら10代後半近いのかもしれないけどその後で「妻を娶る歳になった」と言っているからあそこの時空歪んでるような。

歴史年表的には蘭陵王に封ぜられたのは19歳の時で,洛陽開放戦は23歳の時。
そして後主(高緯)から賜死したのが33歳の時。

19で女を褒美に下されるのは何の違和感もないけど,33で妻を娶るのは遅すぎる。皇子とは言え傍流で,男の子が産まれようと帝位には何の影響もないのに。

年齢設定が更に迷子

年齢設定が迷子と言えば,あきらもなんですけど…というか,あきらが美丈夫過ぎて年齢不詳というか,歴史年表的には蘭陵王より15歳年下なんですよね。

高長恭が蘭陵王に封ぜられた時にはまだ4歳。同じく洛陽で武名を上げたときでもまだ9歳。
死を命じた時でもまだ18歳(当時とすればもう立派な大人だけど)なので,そう考えて見ると暗愚というよりは幼すぎるという印象に変わりますね。
とはいえ軍を率いるなんていくら皇太子でも(ヾノ・∀・`)ムリムリ なので木村先生は高緯の年齢を+10くらいで考えているのではないかしら…14歳なら高名な将軍に実質的な指揮をさせて,お飾りの将軍として戦に出るのはあり得る歳だし。

ただ,最後に「幼いときから憧れてた」って言うんですよね。幼いときから憧れるほどの年の差…?

あの馬はどうかと思う

舞台上で馬に乗るのであれば,黒い瞳でプガチョフたちがやったような,布を手綱に模してやった振付が凄く格好良かったと思うんですよ。
今回は人数が少ないからそれもできないのか,それにしてもあの箱馬はちょっと…幕を落として出てきたのがあの箱馬ってのは客席どう反応して良いか解らない…

逍遥君が凄くよかった

あきらと帆純まひろくんの二人は大変によい芝居をしていました。
この二人の間にあったのは恐らく純粋な愛などではなく,家族のような愛に飢えた若き支配者と,それに取り入る打算的な愛であったのだろうけれど,それを踏まえた上でなお帆純まひろくんがたいへんよい芝居をしていました。

高緯に対する媚びないことが最大効率の阿付なのだと解っているあたり,ものすごく有能な成り上がり者だと感じました。他の取り巻きが酸を企んでいる時も,追従するでもないあたり,「誰か」と組んで事をなしてもそれは「自分の」功績ではないというか,根本的に人を信用してないというか,他の取り巻きと同列ではないというプライドも感じました。

だからこそ,なんでそんな(蘭陵王に嫁取なんて)急いだ策でボロを出したんや…

あと,帆純まひろくんは指が細くてとても美しい手をしておられますね。だからこそあの牡丹の花を摘む仕草がとてもキレイですね。普段隠れている腕がこれまた超セクシーでした。

賜死の流れに納得いかない

逍遥君の策で毒殺されかけたので,逆にやり込めて毒杯を飲ませた蘭陵王が死罪になる流れがイマイチ納得いかない。

そもそも毒杯を用意したのは逍遥君であり,その罪を着せられるのは鄭氏だったはず。ただ,蘭陵王がそれを喝破したことで逍遥君が毒を用意したことはあの場では明らかになったのでは? ならなかったの? あのやりとりは「近づくと害が及ぶ」から近づかなかった人達には聞こえて無くて,ただ毒杯を強要したようにしか見えてないの?
ただ,いずれにしても逍遥君が自ら毒を飲んで自分の口を封じたことで,「蘭陵王が逍遥君に毒杯を干させた」事だけが事実として残ってしまったんだろうか。

それにしてもだ。

蘭陵王は傍流とはいえ皇家に連なる人物であり,実際に王位(蘭陵の王)についている皇子な訳で,一方の逍遥君は皇帝のお気に入りとは言え所詮は貴族でしかない訳で。この二人の間には命の軽重が歴然としてあるはず。人一人殺したから皇子とはいえ死罪,っていうのはちょっと無理があるんじゃないかなぁ…

「助けてあげたかった」と考えが足りないなりにも思うような皇帝(高緯)が「お気に入りを殺されたから殺してやる」って命じるとは思えない。少なくとも高緯自身は蘭陵王に対して並々ならぬ憧れを抱いていたのだし。毒杯を下賜する流れにしても,どうせ死罪ならプライドのある死を,という思いを感じたので(高貴な人に磔刑はちょっと…),むしろ皇帝には死罪を撤回するだけの権力がないということなのでは。あんなに取り巻きがいて,権力があるように見えるのに,毒殺されそうになったから返り討ちにした皇子の無理やりな死罪さえ撤回できないのがなんかアンバランスに感じました。

教訓譚が過ぎる

洛妃(音くり寿)の台詞にもあるけど,「与えられていたのではなく奪われていた」という言葉はほんとに,深い。

他の台詞で,忖度が過ぎることとか,立場が上の者の好意の押しつけや,「そんなつもりではなかった」が個々人の問題では済まないこととか,ちょっと今回の作品は説教くさい部分が(特に終盤の台詞に)集約されてるんですが,それはそれとして,この「与えられていたのではなく奪われていた」の台詞は迂闊に考察するには憚られるようなものを感じました。

その一方で「人の嫌がることはしてはいけない」という台詞はあまりにも陳腐に聞こえました。敢えて言葉にしなければいけなかったんだろうか。それも京三紗さん一人をセンターに立ててピンスポあてて。語り部に徹していた京三紗さんがあの場面だけセンターに立つから,あの台詞が(木村先生の意図がどの程度の重みであったのかはさておき)ものすごいウエイトを持ってしまっていて,それに対して台詞の内容があまりにも陳套であると。

じゅりあさまに「諸行無常,盛者必衰」と言わせるのも…いや,この言葉自体は仏典にあるから,当時から存在していた単語だというのは理解しているのですが。それにしてもこの二つを並べて言われると,どうしたって日本人だもの,平家物語を想起してしまいますよ。時代考証間違ってないのにこっちの頭がバグを起こすわ。

とはいえ

洛妃に対して「生きろ」と告げる場面といい,洛妃が蘭陵王に「逃げろ」という場面といい,単に「生きろ」「逃げろ」と言うのではない重みを感じた芝居でした。好きかどうかはおいといて。
あと,小劇場らしく最下級生まで全員に台詞が振られていて,まだまだ声が幼いとかは勿論あるんですけど,一人で台詞を沢山言う経験って大事だと思うので。うん。いや,でも誰より勇ましい声を上げていたのはじゅりあさま(ゆけぇ!の声が超格好いい)でしたね。ありがち。

けど娘役は割を食ったなぁ…という印象が拭えません。下賜される娘達は可愛いし,あきらを取り巻く女官も可愛いんだけど! だけど! 個立ちとなると…少し弱いなぁ…って。

デュエダンはアリ

宮島口で見たことあるこの蘭陵王,みたいなお衣装でのデュエダン。これはよかったと思いますすごく。宝塚らしくないといえばそうなんだけど,ただ,デュエダンというシステム自体はとても宝塚らしいものなので,そこでどんな洋式で舞うかは大した問題ではないように思います。

ただ,くり寿ちゃんはもうちょい体幹しっかりした方が格好良く見えるのでは,と思いました。最後の振りのところね。普段とは全然違う動きで,最後止まらないといけないから難しいんだろうなぁ…
ウエメセになってるけどこのデュエダンはさすがに音楽もかっこいいし,これだけで2,000円は出せる。なお今作は帆純まひろくんに6,000円なんか余裕で出せるので,なんだかんだで実質タダの魔法は健在です。

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